マンスリーカルチャー
令和2年3月

今年は桜の開花が例年より早く、入学式にお似合いの光景が見られなくなりそうでいささか残念ですが、皆さまはお花見にはどこへお出かけでしょうか。
江戸時代からの有名なお花見スポットの一つは隅田川です。この川は荒川の支流で千住より下流を隅田川と呼び、この川に架けられている橋は現在18本ありますが、江戸時代には最初に架けられた千住大橋から順に両国橋、新大橋、永代橋、吾妻橋の5つだけです。
落語の演目の「百年目」で、大番頭がこっそりと屋形船で芸者衆とお花見を楽しんでいたが、「吾妻橋」あたりで船を降りて堤(いわゆる「墨堤」)に上がってひと騒動が起きる、という場面がありますが、この頃から隅田川でお花見をしていた様子が窺えます。なお、落語で誕生したお話から歌舞伎でも演じられるようになった「文七元結(ぶんしちもっとい)」の中で、身投げをしようとした文七を左官の長兵衛が止めた場所も「吾妻橋」です。
ちなみに、江戸時代に書かれた本の中で『花見の場所数ある中に墨堤の花見に上こす賑わいはいなし』と紹介されたほど隅田川沿いの花見は格別の賑わいだったようです。
その歴史を引き継ぐ「墨堤(ぼくてい)さくらまつり」は現在も行われていますが、今年は「新型コロナ」の関係ですべてのイベントが中止になりました。(ライトアップだけは3月20日(金)から4月10日(金)まで行われるそうです。)
このところは、人が集まるところに出掛けることは控える風潮のようですので、落語でも聴いて、お花見の雰囲気を楽しむのも一法かもしれません。息苦しい状況が続きますが、前向きな気持ちで体力をつけてこの騒動を乗り越える「橋」を渡りたいものです。
