平成31年4月

桜前線はだいぶ北上しているようですが、今年の東京はここ最近にない遅い開花でした。加えて開花のあと寒い日が続きましたので、例年以上に長く桜を楽しめました。
当然のことですが、満開の桜を愛でたあとには、散る桜を見ることになります。そこで思い出される歌があります。

「明日ありと思う心のあだ桜
夜半に嵐の吹くものかは」
親鸞聖人が9歳の時に得度されるためにあるお寺を訪ねたところ、夜になっていたため、お寺の和尚が「得度式は明日にしましょう」と言われたことに対して詠まれた歌とされています。
ものの本によれば、
「今まさに咲き誇っている桜も、いつ嵐が来て無残に散ってしまうかもしれません。
今日あって、明日なき命、どうか、今日得度して下さい。」
という趣旨だそうです。いわゆる「諸行無常」のことで、「なにごとも今の状態がそのまま変わらずに続いていくことはない。」という教えです。

この言葉を思い出すきっかけとなった出来事が最近ありました。4月中旬にアメリカで行われたゴルフのメジャー選手権のひとつ「マスターズ・トーナメント」でタイガーウッズ選手が最終日に劇的な逆転で優勝したことです。彼は若い時から長らく向かうところ敵なしの世界の頂点に立つプロゴルファーでしたが、10年ほど前からプライベートの面でトラブルが続き、選手としての活躍の話題は聞くことがありませんでした。昨年から正式復帰してようやく復活の兆しが少し見えてきたところでしたが、世界のトッププロが集まるこのトーナメントでの今回の優勝は全世界を驚かせるニュースになりました。この優勝には、本人の努力はもちろんですが、周囲の支えもあってのことと思います。苦しくとも諦めずに励むことを学んだように思いました。余談ですが、タイガーウッズ選手の復活を期待して、スポンサー契約を続けた日本の某製薬会社も「諸行無常」の心持があったのかは知りませんが、先見の明がありましたね。(外用鎮痛消炎薬です)