アジアの風
Vol.2 おせち料理

1.御節・おせち料理とは
お節料理の「節(せち)」とは「節日(せちにち)」のことをさします。おせち料理(=御節料理)は、節日のための料理のことです。現代では、節日の中でも特に正月のために用意する料理をおせち料理といいます。
2.おせち料理の意味といわれ
(例)三段重の場合
壱の重:「口取」「祝肴」
- 栗きんとん … 「栗金団」と書くことから、金運を招く。繁盛、繁栄。
- 黒豆 … 「黒くまめまめしく」という語呂合わせから、陽に焼けてまめまめしく良く働くようにという意味。また、「まめに暮らす=元気に暮らす」という意味もあります。
- 紅白かまぼこ … 紅白はおめでたさの象徴としてお祝い事全般に使われます。蒲鉾の材料となる白身魚は、昔は非常に高価であり、白身魚で作る蒲鉾もまたご馳走でした。海のない地域にも流通可能であるほか、生ものよりも保存がきく高級な海の幸と考えられていました。
- 昆布巻き … 「よろこぶ」という語呂合わせと、「子生婦(こんぶ)」という字をあてる語呂合わせがあります。一家の幸せと、子孫繁栄を祈ります。
- 田作り … かたくちいわしの稚魚は、昔肥料として使われ、ゴマメ(五万米=ごまめ)とも呼ばれています。田作りという名称もごまめと同様に、この魚が肥料として使われたことから来ています。豊作を祈願する食べ物です。
- 伊達巻き … 蒲鉾と同様、白身魚を原料とし、卵を混ぜることで黄金色になることから、豪華で見栄えが良く神様への供え物として相応しいと考えられていました。巻いている形状から反物(着物の布地)を連想させ、衣装に困らないという繁盛、繁栄の願いを込めてという説や、巻き物として文化的な繁栄を願っているという説などがあります。
- 錦玉子 … 黄色と白は金銀を表し、財宝や富の象徴とされました。
弐の重:「鉢肴」
- 海老 … 腰が曲がっている姿から、腰が曲がるまで、ともに長生きするようにという長寿のシンボルとして。
- 数の子 … 子沢山、子孫繁栄。
- 紅白なます … 紅白はおめでたさの象徴としてお祝い事全般に使われます。熨斗などに使われる紅白の水引を表しているという説もあります。
参の重:「煮物」
- 里芋 … 里芋は、土の中に子芋をたくさんつけることから、子沢山の象徴とされます。子孫繁栄を祈ります。
- れんこん … 穴があいているので「将来を見通せるように」という願いを込めて。
3.アジア各国のおせち料理

年糕(ニンゴウ)
冒頭で「節日(特に正月)に食される料理」というのがおせち料理の由来と記しましたが、日本以外のアジアの国々にも、節日に決まった料理を食べる風習があります。
例えば、中華圏における最大の節日は旧正月ですが、香港ではその時期に「年糕(ニンゴウ)」という赤いお餅が食べられます。

この年糕は旧正月の香港には欠かせないもので、「糕」は「高」と同じ発音であることから、「年々高く」という縁起の良い意味が込められています。昔は大体丸い形でしたが、今は魚の形をしたものもあります。

大根餅
そしてその後には大根餅(中国語では「蘿蔔糕」)も食べられます。これも「糕」という文字を含んでいるので縁起が良いとされています。
中華圏以外では、ベトナムの「バイン・テト(ベトナムちまき)」、韓国の「トックッ(餅入り雑煮)」などが正月に食される定番料理として知られています。