令和7年10月

記録的な暑さもようやく収まりましたが、日本近海の海水温も上昇しているようです。気象庁によると、日本近海の海面平均水温は2024年までの100年で1.33度上昇し、世界全体の0.62度を大きく上回り、日本近海は深刻な状況です。海水温が上昇すると海流に影響が出て、日本近海の黒潮などの流れが変わる現象が起きます。このことから、漁業に悪影響がでるなか、養殖で魚を育てる取組みが広がっています。
そのひとつが、ブリです。直径30mほどの大型のいけすを水深20メートルの深さに沈めて、夏でも25度程度と海面より低い水温を保つことで、ブリの養殖に適するといわれる18度から27度に収まる環境で、ブリの養殖を行っています。このように育てられた養殖ブリの人気は高く、2024年の生産量が13万トンに対して、天然ものは8万トンと大きく上回っています。しかも東京の卸売市場での平均取引価格が養殖ものが1,397円で、天然もの821円より高価であったにもかかわらず、養殖ものが選ばれています。この理由としては、脂ののりや季節を問わず安定した品質が評価されているようです。ブリのほかサーモンや真鯛も養殖が行われていますが、かつて養殖が難しいといわれたマグロの養殖に成功した近畿大学が一躍脚光を浴びた養殖マグロはピンチのようです。最近になって餌代の高騰のほか、天然もののマグロの豊漁で養殖マグロの採算が悪化しているからです。
最後にこの時期ならではのサンマです。ここ数年庶民の味方のサンマがすっかり獲れなくなり、2024年はピーク時の10分の1まで減少しました。(ただ今年は今までのところ豊漁ですが)このような中で、朗報がありました。マルハニチロがサンマの試験養殖に成功したそうで、本格的な養殖が軌道に乗ることに期待したいです。そうなれば、市場に出るサンマの量が安定して庶民の味方サンマの復活になり、秋の食卓の主人公の地位も安定しそうですね。

